10月19日のAIニュースをまとめてお届けします。

この日の中心は、新モデルのスペック競争ではなく「AIを開発する企業そのものの統治」でした。Anthropicが発表した2つの仕組み、Character.AIの人材をめぐる事業再編、そして歩道を走る配達ロボットが引き起こした摩擦。どれも、どのAIを自社の業務に入れるかという判断に関わってきます。

※当日は各社の一次情報サイトへ直接アクセスできなかったため、発表を報じた媒体記事を出典としています。細かな条件は一次情報でのご確認をおすすめします。

①株式の5%を公益基金へ──Anthropicが示した利益配分の形

①株式の5%を公益基金へ──Anthropicが示した利益配分の形

Anthropicは、自社株式の5%を「public benefit fund(公益基金)」へ拠出する方針を明らかにしました。同社はもともと公益法人(PBC)という形態で設立されていますが、今回はその上に、株式という形で利益の一部をあらかじめ切り分ける仕組みを重ねることになります。基金を誰がどう運用し、どこへ配分するのかといった制度の中身については、続報を待つ段階です。

出典:TechCrunch

📝考察:株式を拠出するという形は、将来の企業価値が上がるほど公益側の原資も増える設計で、「今の利益の一部を寄付する」より拘束力が強い可能性があります。ただし、ガバナンス上どの程度不可逆なのか(誰が基金を統制するのか)は現時点では確認できておらず、ここは仮説の域を出ません。評価は制度の細部が出てからで十分でしょう。

②承認なしで公表できる外部監視──Anthropicが「社員並み」アクセスを開放

②承認なしで公表できる外部監視──Anthropicが「社員並み」アクセスを開放

外部のAI監視(watchdog)団体に対し、Anthropicが「employee-like(社員に近い)」アクセスを与えたと報じられました。見るべきは、その団体が調べた結果をAnthropicの承認を経ずに公表できるとされている点です。社内情報に触れながら、企業側の検閲を受けずに外へ書けるという枠組みは、AI業界ではまだ数少ない事例にあたります。

出典:Ars Technica

📝考察:「安全性に配慮しています」という自己申告と、「外部が中を見て自由に書ける」仕組みとでは、第三者から見た信頼性が大きく異なります。他社が追随するかは未知数ですが、AIベンダーを選定する企業にとって「外部検証を受け入れているか」は、今後の比較軸のひとつになり得ると見ています(これは筆者の見立てです)。

③Character.AIの従業員大半をDisneyが雇用へ、ただし入札は未確定

③Character.AIの従業員大半をDisneyが雇用へ、ただし入札は未確定

対話AIサービスCharacter.AIの従業員の大半を雇用することで、Disneyが合意に至ったと報じられました。提出書類では、オファーを受け取ったCharacter.AI従業員のうち「大多数」が受諾したとされています。もっとも、これは「stalking horse bid(当て馬入札=最初の基準となる入札)」という位置づけで、他社がより良い条件を出す余地はまだ残されている段階です。

出典:TechCrunch

📝考察:キャラクター対話AIの技術とIP(知的財産)を持つ側が結びつく動きとして理解できますが、入札が確定していない以上、着地は変わり得ます。消費者向けAIサービスは、技術の優劣だけでなく「権利を持つ企業と組めるか」が生き残りを左右する局面に入っている、というのが現時点での私の読みです。

④歩道で起きた衝突──配達ロボットの前に立ち続けた女性が逮捕

④歩道で起きた衝突──配達ロボットの前に立ち続けた女性が逮捕

米フィラデルフィアで、Uberの配達ロボットの前に立ちふさがり、移動を拒んだ女性が治安紊乱行為(disorderly conduct)の容疑で逮捕されました。女性は地元局の取材に、ロボットの存在を否定する趣旨のコメントを残しています。自動化された機械が歩道という公共空間を走ることに対し、住民側の反発が表に出た一例と言えます。

出典:The Verge

📝考察:AIの社会実装でボトルネックになるのは、性能よりも「周囲の人がそれを受け入れるか」であることを示す一件です。社内にAIやロボットを導入する場合も、技術検証と同じ重みで受容性の設計(誰が、どこで、どう使うかの合意形成)が要る、と考えています。


以上、本日の4本でした。統治や受容性の話題は派手さに欠けますが、どのAIを業務に組み込むかという実務の判断では、ベンチマークの数字と同じくらい重みを持ちます。動きがあれば、また取り上げます。

※本記事は公開情報をもとに編集しています。未確定の事項には「可能性」「仮説」と明記しています。